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更新日:2026年7月9日

腰部脊柱管狭窄症

腰部脊柱管狭窄症とは

背骨の中には、神経が通る「脊柱管」というトンネルがあります。年齢を重ねるにつれて、骨や関節が変形したり、靭帯が厚くなったりすることでこのトンネルが狭くなり、中の神経(馬尾や神経根)が圧迫されて痛みやしびれを引き起こします。

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主な症状

間欠性跛行(かんけつせいはこう)

この病気の代名詞とも言えるのが「間欠性跛行」という歩行障害です。

  • 歩くと症状が出る:しばらく歩いていると、お尻や太もも、足の裏にかけて痛みやしびれ、足の重さ(脱力感)が出てきて歩けなくなります。
  • しゃがむと楽になる:少し立ち止まって前かがみになったり、ベンチに腰掛けたりして休むと、症状がスーッと和らいで再び歩けるようになります。

なぜ前かがみで楽になるの? 背筋をピンと伸ばすと脊柱管のトンネルがさらに狭くなって神経を圧迫しますが、少し前かがみ(自転車の運転や、買い物カートを押す姿勢)になるとトンネルが広がり、一時的に圧迫が緩むためです。

手術を検討するタイミング

以下のような症状が見られる場合は、神経へのダメージが大きくなっているサインであり、手術(神経の圧迫を取り除く「除圧術」など)が検討されます。

  1. 歩行障害が進行し、日常生活(買い物や散歩)に著しい支障が出ている
  2. 足の筋力が低下している(スリッパが脱げやすい、つま先が上がりにくい)
  3. 排尿・排便障害(尿が出にくい、漏れる、残尿感があるなど)がある場合 ※これは急を要するサインです。 

脊柱管狭窄症の手術

大きく分けると「除圧術」と「固定術」の2つがあり、背骨のグラつき(不安定性)があるかどうかで選択が変わります。

当院では、最新の脊椎手術ナビゲーションシステムを導入しています。この装置は、手術中に「器具の先端が、患者さんの解剖学的構造のどこに位置しているか」をリアルタイムで高精度に画面に表示するシステムであり、いわば「手術室のカーナビゲーションシステム」のような役割を果たし、より正確で安全な手術が可能になっています。

椎弓切除術による除圧術

椎弓切除術は、脊椎の変形などによって狭くなった脊柱管を広げ、圧迫されている神経(脊髄や馬尾神経、神経根)の通り道を確保するための代表的な除圧手術です。

背側からアプローチし、脊髄を覆っている椎骨の後方部分である「椎弓」や棘突起、あるいは厚くなった黄色靭帯などを一部または全部切除します。

神経の「屋根」にあたる骨(椎弓)を取り除くことで、脊柱管内の容積を拡大し、締め付けられていた脊髄や神経根への機械的圧迫を直接的に解除(除圧)します。

  • 方法:神経を圧迫している黄色靭帯(おうしょくじんたい)や、肥厚した骨の一部を削って通り道を広げます。
  • 最新の傾向: 近年は顕微鏡や内視鏡、あるいは内視鏡下手術(MEDやPELD/FEDなど)を用いた「低侵襲手術(ていしんしゅうしゅじゅつ:体への負担が少ない手術)」が主流です。傷口が1〜2cm程度と小さく、筋肉へのダメージを最小限に抑えられるため、回復が非常に早いのが特徴です。

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【手術方法の種類

1.全椎弓切除術(上の図)

視野が広く、確実な除圧が可能。一方で、支持組織(棘間・棘上靭帯や背筋)の損傷が大きく、術後の腰痛やアライメント異常(変形)、脊椎の不安定性を招くリスクが比較的高い。

2.片側進入両側除圧術

背中の中心から少しずらした片側だけを小さく切開(約2〜4cm)し、顕微鏡や内視鏡を覗きながら骨や黄色靭帯(おうしょくじんたい)にアプローチします。進入した側(片側)の骨を削ったあと、神経を傷つけないように骨の内側をトンネルのようにくぐって反対側の骨や肥厚した靭帯まで削り取ります。外側の傷や筋肉のダメージは「最小限(片側だけ)」に抑え、神経を圧迫している骨や靭帯は「全方位(両側)」からしっかり取り除く、非常に合理的で患者さんの体に優しい手術です。

3.顕微鏡・内視鏡下除圧術

数センチの小さな皮膚切開から、顕微鏡や内視鏡を用いて精緻に行う。筋肉の剥離が最小限で済むため、術後疼痛が軽く、早期離床・早期退院(数日〜1週間程度)が可能。

脊椎固定術

背骨にズレ(すべり症など)やグラつきがあり、削るだけでは背骨が不安定になってしまう場合に選択されます。

  • 方法: 神経の圧迫を取り除いた後、自分の骨(骨盤などから採取)や金属製のスクリュー、ケージなどを用いて、骨同士を固定して安定させます。
  • 特徴: 除圧術に比べると手術の規模が大きくなり、傷口や手術時間も長くなりますが、背骨の歪みやグラつきによる痛みを根本から抑えることができます。

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大切なこと

手術を検討するタイミングでも記述しましたが、歩行障害の進行、足の筋力が低下している(スリッパが脱げやすい、つま先が上がりにくい)、排尿・排便障害などがある場合は緊急を要します。早急に専門医療機関を受診してください。

椎弓切除術は、「神経をいかに優しく、十分に解放できるか」という十分な除圧と、「背骨の強度をいかに落とさずに残せるか」という支持性温存のバランスが重要になります。最近は顕微鏡や内視鏡などのテクノロジーを駆使し、より安全で精密なコントロールが行われ、低侵襲で安全性の高い手術になっています。

安全性は高い手術ですが、合併症の発生が0%ではありません。以下のような脊椎手術特有の合併症を考慮する必要があります。

合併症

  • 硬膜損傷・脳脊髄液漏(髄液漏):神経を包む硬膜が傷つき、髄液が漏れることで術後に強い頭痛を起こすことがあります(顕微鏡下などで修復術を行います)。
  • 神経損傷・症状の悪化:一時的な一過性のしびれから、稀に運動麻痺の悪化、排尿・排便障害が生じることがあります。
  • 術後血腫(硬膜外血腫):術後の出血が脊柱管内に溜まって神経を再圧迫すると、緊急での血腫除去が必要になる場合があります。
  • 隣接椎間障害:固定術を併用した場合など、手術した上下の骨に負担がかかり、数年後に再手術が必要になるケースがあります。 

術中ナビゲーションシステムとは

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令和8年1月に導入した、術中ナビゲーションシステムは、メドトロニック(Medtronic)社が開発した、最先端の術中ナビゲーションシステムです。(写真提供:日本メドトロニック株式会社)

手術中に「器具の先端が、患者さんの解剖学的構造のどこに位置しているか」をリアルタイムで高精度に画面に表示するシステムであり、いわば「手術室のカーナビゲーションシステム」のような役割を果たします。

主に脳神経外科、脊椎外科、耳鼻咽喉科領域などの、極めて繊細かつ正確性が求められる手術で導入されています。

主な特徴とシステムテクノロジーは以下の通りです。

ナビゲーションにより安全な手術が可能

手術器具の位置を検出するため、症例や術式に合わせて光学式(赤外線カメラと反射マーカー)と磁場式(EM:電磁場センサー)の両方のトラッキング技術を選択・併用できる高精度なハイブリッド追跡(トラッキング)方式を搭載しています。これにより、術野の遮蔽(死角)によるエラーを減らし、手術器具の位置をナビゲーションで確認しながら手術を進めますので、より安全な手術が可能になります。

画像を使った正確な手術を再現

術前に撮影したCT、MRIをはじめ、CTA(血管造影)、fMRI(機能的MRI)、PET、SPECTなどの異なるモダリティの画像データをシステム上で高精度に重ね合わせ(フュージョン)、3Dモデル化できます。この画像を使って手術を進めることにより正確な手術が可能になっています。

  • 自動3Dセグメンテーション:腫瘍、血管、白質線維などの重要組織を自動で色分け抽出し、立体的な立体画像として描出します。
  • バーチャルシミュレーション:仮想開頭術や仮想内視鏡機能を用い、術前に最適なアプローチ経路(トラジェクトリー)をシミュレーション・保存できます。

様々な手術器具と連携により手術時間を短縮

X線透視装置、手術用顕微鏡、超音波装置などの手術で使用する医療機器と連携が可能で、スムーズな手術が可能となり、手術時間を短縮することができます。また、これにより手術中の放射線使用時間も短縮し、放射線被ばくを低減することができます。

  • 術中イメージング装置との統合:手術室の中でリアルタイムに撮影した3D画像と自動で位置合わせを行い、患者の体位変換や術中脳シフト(脳の変形)にも即座に対応します。
  • 手術用顕微鏡や内視鏡、超音波装置との接続:顕微鏡の視野内にナビゲーション情報をオーバーレイ表示(HUD: ヘッドアップディスプレイ)させることが可能です。

主な適応領域と手術手技

  • 脳神経外科:脳腫瘍摘出術、脳生検(バイオプシー)、DBS(脳深部刺激療法)リード留置、脳動脈瘤クリッピング、カテーテルやドレナージ術。深部にある病変へ安全かつ最小限の侵襲で到達するルートをナビゲートします。
  • 脊椎外科:脊椎除圧術、脊椎固定術(椎弓根スクリュー:ペディクルスクリューの留置など)。骨の変形が強い症例や、肉眼で見えない解剖学的構造に対し、安全にインプラントを設置するサポートをします。
  • 耳鼻咽喉科:複雑な副鼻腔手術や頭蓋底手術など、薄い骨を隔てて眼球や頸動脈が隣接する領域での安全な骨切り・病変切除。

手術でのメリット

  1. 安全性の向上:重要な血管や神経の損傷リスクを低減します。
  2. 低侵襲化:的確な位置へのアプローチが可能になるため、皮膚切開や骨窓(開頭・開窓範囲)を最小限に抑えられます。
  3. 手術時間の短縮:術中3Dイメージングシステム等との連携による迅速なレジストレーションや、術中インプラント位置の即時確認により、手技の効率化とトータルの手術時間短縮に寄与します。

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