(未破裂)脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)
脳動脈瘤とは
脳動脈瘤とは、簡単に言うと「脳の血管の壁が弱くなり、こぶのように膨らんだ状態」のことです。多くの場合、血管の分岐点などの負担がかかりやすい場所に発生します。破裂すると「くも膜下出血」の原因となりますので、見つかった場合は必ず専門医へご相談ください。
脳動脈瘤の好発部位
脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)は、脳の太い血管の分岐部にできやすく、特にウィリス動脈輪と呼ばれる脳底部の血管の部分に集中しています。
主な好発部位は以下の通りです。
1.内頸動脈(IC)約30%
内頸動脈は脳に血液を送る主要な血管です。
- 内頸動脈-後交通動脈分岐部(IC-PC): 最も頻度が高い部位の一つです。動眼神経の近くにあるため、破裂前に「まぶたが下がる(眼瞼下垂)」などの症状が出ることがあります。
- 内頸動脈-前脈絡叢動脈分岐部(IC-Cho)
2.前交通動脈(Acom)約30〜35%
左右の前大脳動脈をつなぐ短い血管部分です。
- 脳動脈瘤の中で最も発生頻度が高いとされる部位です。
- 破裂すると、前頭葉の症状(性格変化や記憶障害など)が出やすい傾向にあります。
3.中大脳動脈(MCA)約20〜25%
前大脳動脈から分かれ、脳の外側を走行する太い血管です。
- 中大脳動脈分岐部(M1-M2分岐部)によく見られます。
- 他の部位に比べて、破裂した際に脳内出血(血腫)を合併しやすいのが特徴です。
4.椎骨・脳底動脈系(教本・後頭葉側)約10%
脳の後ろ側(小脳や脳幹)を栄養する血管です。
- 脳底動脈先端部(BA top): 左右の後大脳動脈に分かれる頂点部分。
- 椎骨動脈-後下小脳動脈分岐部(VA-PICA)

脳動脈瘤が見つかったら
最近では脳ドックなどの検査で、症状のない「未破裂脳動脈瘤」が偶然見つかるケースが増えています。脳動脈瘤は、破裂すると「くも膜下出血」を発症し、非常に危険です。もし、見つかったら専門医へ受診する必要がありますが、治療するかの判断や治療を検討する目安、治療法などを簡単にご説明します。
治療するかどうかの判断
以下の2つを天秤にかけて慎重に検討します。
- 治療しない場合: 将来、クモ膜下出血を起こす危険性(下の年間破裂率表を参照)
- 治療する場合: 合併症が起こる危険性(一般的に2~5%)

治療を検討する目安
治療は、動脈瘤の大きさだけでなく、動脈瘤のある場所を十分に検討します。そして、患者さんの状態や年齢なども十分に考慮します。
- 動脈瘤の大きさが5mm以上(場所や形によっては3mm以上)。
- 今後10〜15年程度、元気に生活できる見込みがある。
- 破裂しやすい場所(前交通動脈など)や、形がいびつなもの。
2つの治療法
- 開頭クリッピング術(ネッククリッピング術):動脈瘤(コブ)の根元をクリップで挟む治療です。形が複雑なものや、血管が枝分かれしている場所にあるコブでも、確実性の高い治療が可能です。なお、手術は眠った状態で行う『全身麻酔』が必要となります。
- 血管内治療(カテーテル):足の付け根から管を入れ、瘤の中にコイルを詰める手術です。局所麻酔で行うため身体への負担が少ないく、手術のリスクが高い高齢者などでも手術ができます。頭の深い場所にある瘤にも手術できます。動脈瘤のネックが狭い場合はコイル塞栓のみで行えますが、ネックが広い場合はコイルが外に飛び出してしまうためステントでカバーしてコイルで塞栓します。

「どちらの治療が優れているか」ではなく、動脈瘤の場所や形に合わせて最適な方を選ぶことが重要です。
安全な手術を支える「チーム医療」
脳外科手術は医師一人の腕だけでなく、最新機器と専門スタッフの連携が不可欠です。
- ナビゲーションシステムによりカーナビのように手術箇所を正確に特定。
- 術中モニタリングで手術中に手足が動くかリアルタイムで確認し、麻痺を防ぐ。

- 専門チーム: 放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、看護師、麻酔科医が一体となってサポートします。
患者さんへのメッセージ
未破裂脳動脈瘤は、クモ膜下出血と違って「じっくり考えて納得して選ぶ時間」があります。
ガイドラインという基準はありますが、年齢や持病、人生観は人それぞれです。「数字上の確率」だけで決めるのではなく、医師としっかり対話し、納得感を持って治療方針(手術をするか、手術せずに経過観察をするか)を決めることが大切です。不安な場合は、専門医へお気軽にご相談ください。