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更新日:2026年7月9日

腰椎すべり症

腰椎すべり症とは

腰椎すべり症は、積み木のように連なっている腰の骨(腰椎)が、正常な位置から前方(お腹側)へズレてしまうものと、後方(背中側)へズレるものがあります。ほとんどが前方すべりです。この腰椎すべり症の原因は、3つあります。

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1.変性すべり症

  • 特徴: 骨自体にひび割れなどはなく、加齢によってクッション(椎間板)や関節が傷み、緩むことで骨が前にずれます。
  • 多く見られる人:40代以降の女性に圧倒的に多い傾向です(ホルモンバランスの変化や筋力低下が影響していると言われています)。
  • 好発部位:第4番目の腰椎によく起こります。

2.分離すべり症

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  • 特徴:学生時代のスポーツなどで骨の後ろ側(椎弓)が疲労骨折を起こして離れてしまい(分離症)、そこからさらに骨が支えを失って前にずれていく状態です。
  • 多く見られる人:若い頃に激しいスポーツ(野球、バレーボール、サッカーなど)をしていた男性に比較的多く見られます。
  • 好発部位:第5番目の腰椎によく起こります。

3.形成不全性すべり症

生まれつき脊椎の発育に問題があるために起こりますが、非常にまれです。比較的若いうちから症状が出てくることがあります。

主な症状

  • 腰痛:腰を後ろに反らせたときや、重いものを持ったときに痛みが強くなります。
  • 下肢のしびれ・痛み:お尻から太もも、ふくらはぎ、足の裏にかけて、ピリピリとした痛みやしびれが出ます。
  • 間欠跛行:すべり症の典型的な症状です。しばらく歩くと足がしびれたり痛くなったりして歩けなくなりますが、少し前かがみで休むと再び歩けるようになります。 

腰椎すべり症の手術

体に負担の少ない保存療法(安静と日常生活の改善、薬物療法、リハビリ、コルセットの使用など)から開始しますが、保存療法を続けても歩行障害が進行する場合や、排尿・排便に支障が出るほどの強い神経圧迫(馬尾症候群)が見られる場合は、骨を固定したり神経の通り道を広げたりする手術が検討されます。

当院では、最新の脊椎手術ナビゲーションシステムを導入しています。この装置は、手術中に「器具の先端が、患者さんの解剖学的構造のどこに位置しているか」をリアルタイムで高精度に画面に表示するシステムであり、いわば「手術室のカーナビゲーションシステム」のような役割を果たし、より正確で安全な手術が可能になっています。

腰椎固定術

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  • 概要:ずれている椎骨同士をスクリュー(金属製のネジ)やケージ(椎間板の代わりとなるスペーサー)を用いて固定し、一本の骨として癒合させる手術です。代表的な術式に、後方からアプローチするTLIF(椎間(体)固定術)やPLIF、あるいは側腹部から侵襲を少なくしてアプローチするLIF(XLIF/OLIF)、前方からアプローチするALIFなどがあります。
  • 適応:すべりの度合いが強い場合や、前後の異常な可動性(グラつき)があり、除圧だけでは術後に再発・悪化するリスクが高い場合。
  • メリット:不安定性の根本解決になるため、腰痛そのものの改善効果も期待できます。
  1. TLIF:経椎間孔腰椎椎体間固定術で、PLIFより少し外側の「椎間孔(ついかんこう)」と呼ばれる神経の出口側から、片側進入でケージを斜めに挿入します。神経の真ん中(硬膜嚢)や馬尾神経への牽引を最小限に抑えられるため、PLIFに比べて神経損傷のリスクが低減するというメリットがありますが、片側からのアプローチになるため、反対側の除圧が必要な場合は手技の工夫が必要になります。
  2. PLIF:後方腰椎椎体間固定術で、背中の真ん中を切り、背筋を剥がして椎弓(ついきゅう)の一部を削り、神経の入っている管(脊柱管)を明示してから、左右両側からケージを挿入します。脊柱管を直接開けるため、神経の圧迫(狭窄)を確実に除圧できるというメリットがありますが、神経根(枝分かれする神経)を内側に牽引する必要があるため、神経への一時的なストレスや、背筋の侵襲が大きくなります。
  3. XLIF:側方体経由椎体間固定術で、真横の脇腹から進入し、大腰筋(Psoas)という筋肉を垂直に割って椎体に到達します。非常に大きなケージを設置できるため、高い矯正位(アライメントの修正)と優れた初期固定性が得らるメリットがありますが、大腰筋内を通る腰神経叢(ようしんけいそう)に触れるリスクがあり、術後に太ももの前側のしびれや筋力低下が一過性に生じることがあります。
  4. OLIF:斜側方椎体間固定術で、脇腹のやや前方から、大腰筋(Psoas)の前縁を通って斜めに進入し、大動脈・下大静脈(Aorta / IVC)と大腰筋の隙間を狙うアプローチです。大腰筋を割らないため、XLIFで課題となる腰神経叢の損傷(太もものしびれなど)のリスクをほぼ回避できますが、大血管に近接するため、血管の解剖学的走行に注意を要します。
  5. ALIF:前方腰椎椎体間固定術で、仰向けの状態で下腹部を切り、腹膜の外側を通って椎体の前からアプローチします。主に第5腰椎/第一仙椎(腰椎の最下端と仙骨の間)の固定に用いられます。背筋や後方の神経組織(馬尾)を一切触らないため、後方由来の術後痛がありません。最も大きなケージを最適な角度で挿入できるため、腰椎の生理的前弯(反り)を再建する能力が最も高くなります。しかし、主要な大血管(腹部大動脈や下大静脈の分岐部)を術野で移動させる必要があり、血管損傷のリスクや自律神経への影響(逆行性射精など)に配慮が必要です。

【最近の手術傾向】

脊椎外科においては、患者さんへの負担を減らすため、側方アプローチ(OLIF/XLIF)で椎間を広く固定し、後方からは経皮的スクリュー(PPS)のみを追加する低侵襲な組み合わせが多用される傾向にあります。ただし、すべり症の程度や脊柱管狭窄の強さ、変形の度合いによって、直接除圧ができるPLIF/TLIFが第一選択となるケースも多く、病態に応じた確実な選択がなされています。

大切なこと

一般的に、数ヶ月の保存療法(服薬、ブロック注射、リハビリなど)を行っても効果がなく、以下のような症状が持続・悪化する場合に手術が適応となります。

  • 進行性の神経症状:足の筋力低下(スリッパが脱げる、つま先が上がらないなど)。
  • 排尿・排便障害:馬尾神経が強く圧迫され、尿が出にくい、尿漏れがするなどの症状(これは緊急手術の対象となります)。
  • 著しいQOL(生活の質)の低下:歩行能力が著しく低下し、日常生活や仕事に深刻な支障が出ている場合。

腰に違和感がある、あるいは少し歩くと足が重くなるといった症状がある場合は、脊椎外科(脳神経外科・整形外科)のある医療機関を受診し、レントゲンやMRIによる正確な診断を受けることが大切です。 

術中ナビゲーションシステムとは

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令和8年1月に導入した、術中ナビゲーションシステムは、メドトロニック(Medtronic)社が開発した、最先端の術中ナビゲーションシステムです。(写真提供:日本メドトロニック株式会社)

手術中に「器具の先端が、患者さんの解剖学的構造のどこに位置しているか」をリアルタイムで高精度に画面に表示するシステムであり、いわば「手術室のカーナビゲーションシステム」のような役割を果たします。

主に脳神経外科、脊椎外科、耳鼻咽喉科領域などの、極めて繊細かつ正確性が求められる手術で導入されています。

主な特徴とシステムテクノロジーは以下の通りです。

ナビゲーションにより安全な手術が可能

手術器具の位置を検出するため、症例や術式に合わせて光学式(赤外線カメラと反射マーカー)と磁場式(EM:電磁場センサー)の両方のトラッキング技術を選択・併用できる高精度なハイブリッド追跡(トラッキング)方式を搭載しています。これにより、術野の遮蔽(死角)によるエラーを減らし、手術器具の位置をナビゲーションで確認しながら手術を進めますので、より安全な手術が可能になります。

画像を使った正確な手術を再現

術前に撮影したCT、MRIをはじめ、CTA(血管造影)、fMRI(機能的MRI)、PET、SPECTなどの異なるモダリティの画像データをシステム上で高精度に重ね合わせ(フュージョン)、3Dモデル化できます。この画像を使って手術を進めることにより正確な手術が可能になっています。

  • 自動3Dセグメンテーション:腫瘍、血管、白質線維などの重要組織を自動で色分け抽出し、立体的な立体画像として描出します。
  • バーチャルシミュレーション:仮想開頭術や仮想内視鏡機能を用い、術前に最適なアプローチ経路(トラジェクトリー)をシミュレーション・保存できます。

様々な手術器具と連携により手術時間を短縮

X線透視装置、手術用顕微鏡、超音波装置などの手術で使用する医療機器と連携が可能で、スムーズな手術が可能となり、手術時間を短縮することができます。また、これにより手術中の放射線使用時間も短縮し、放射線被ばくを低減することができます。

  • 術中イメージング装置との統合:手術室の中でリアルタイムに撮影した3D画像と自動で位置合わせを行い、患者の体位変換や術中脳シフト(脳の変形)にも即座に対応します。
  • 手術用顕微鏡や内視鏡、超音波装置との接続:顕微鏡の視野内にナビゲーション情報をオーバーレイ表示(HUD: ヘッドアップディスプレイ)させることが可能です。

主な適応領域と手術手技

  • 脳神経外科:脳腫瘍摘出術、脳生検(バイオプシー)、DBS(脳深部刺激療法)リード留置、脳動脈瘤クリッピング、カテーテルやドレナージ術。深部にある病変へ安全かつ最小限の侵襲で到達するルートをナビゲートします。
  • 脊椎外科:脊椎除圧術、脊椎固定術(椎弓根スクリュー:ペディクルスクリューの留置など)。骨の変形が強い症例や、肉眼で見えない解剖学的構造に対し、安全にインプラントを設置するサポートをします。
  • 耳鼻咽喉科:複雑な副鼻腔手術や頭蓋底手術など、薄い骨を隔てて眼球や頸動脈が隣接する領域での安全な骨切り・病変切除。

手術でのメリット

  1. 安全性の向上:重要な血管や神経の損傷リスクを低減します。
  2. 低侵襲化:的確な位置へのアプローチが可能になるため、皮膚切開や骨窓(開頭・開窓範囲)を最小限に抑えられます。
  3. 手術時間の短縮:術中3Dイメージングシステム等との連携による迅速なレジストレーションや、術中インプラント位置の即時確認により、手技の効率化とトータルの手術時間短縮に寄与します。

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