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更新日:2022年6月22日
当科の一つめの特徴である低侵襲治療の推進について具体的に述べます。
今日、鏡視下手術は目覚ましい進歩を遂げています。当科でも多くの疾患で行っています。現在は、年間約500例の鏡視下手術を経験するに至り、これは全身麻酔を要する手術全体の45%以上を占めます。胆嚢、虫垂、大腸、胃、小腸、肝、副腎、脾、膵、肺など多くの臓器の手術にも適応しています。さらに、2013年からは、鼠径ヘルニアにも腹腔鏡手術を適応し、その結果、患者さんの術後疼痛の軽減や早期社会復帰など、大きなメリットをもたらしています。また、高度肥満におけるスリーブ状胃切除も行っています。
腹腔鏡手術と並んで、低侵襲治療のもう一つの柱はIVR(Interventional Radiology)です。これは“放射線診断技術の治療的応用”と訳され、手術そのものを回避できる治療方法です。当院では血管内治療センターが設備されており、とくに血管外科領域で積極的に行っています。当科で扱う動脈閉塞や腹部大動脈瘤の治療では、血管内治療の症例が多くを占めるようになりました。ステント治療をはじめとするIVRにより多くの症例で手術を回避でき、全身状態が不良な症例に対しても、安全に治療ができるようになりました。結果として治療対象となる症例総数も増加しています。
血管疾患以外にも、外傷による肝臓や脾臓損傷などの腹腔内出血、骨盤骨折による後腹膜出血の緊急止血においてもIVRはきわめて有用です。このような症例においては、第一に経カテーテル的動脈塞栓術(TAE)による止血を試み、極力、開腹手術を回避しています。実際、ここ数年、外傷性肝損傷、脾損傷による出血に対する開腹術は経験していません。また、先に提示したFig.1の症例も手術に先行してIVRにより腫瘍出血を止めた例です。
外傷による脾臓の損傷による大量出血からのIVRによる救命例を提示します(Fig.2)。発症から軽快退院までわずか6日でした。症例は若年者であり、開腹手術を回避できたこと、大切な脾臓の機能を温存できたこと、TAEによる確実な止血により安静の必要がなく早期離床・退院も可能であったこと、など非常に有意義な治療と考えています。
鏡視下手術や、IVRなどの低侵襲治療のみでは、外科診療は成り立ちません。なぜなら、超進行がんの切除、高難度肝胆膵手術、難治な再発がんに対する切除術など、高度な技術が要求される拡大手術が必要な患者さんもたくさんおみえになるからです。当科ではこれらの手術を積極的に施行しています。肝臓・胆道・膵臓疾患の難度の高い手術においては肝胆膵外科高度技能専門医が手術のみならず、術前・術後管理にも関与し、治療の安全性を確保しています。さらに、外科疾患以外でも婦人科、泌尿器科領域の高度進行腫瘍の切除、再建手術などについても、幅広く依頼を受け、手術協力しています。
ここに超進行大腸がんで、再発治療を繰り返しながらも、長期生存している1例を提示します。肝再発の治療目的に紹介受診された患者さんです(Fig.3)。最初の大腸手術からすでに20年経過し、生存中です。2回の肝切除と化学療法(新規抗がん剤治療)により治癒した症例です。
当科では乳がんをはじめとした乳腺の病気の診断から治療を行っています。
人工知能(AI)技術を搭載した、高画質・低被ばくの3Dマンモグラフィ装置を導入し、精密乳腺エコーも併せ精査機関として正確な画像診断を心がけています。(乳腺検査詳細は「放射線技術室」をご参照ください)
乳がんの治療は、早期乳がんに対する手術や薬物療法などの初期治療から、進行・再発乳がんの治療、緩和医療まで、ガイドラインに則した標準治療を提案しながら行っています。術後のリハビリテーションやリンパ浮腫に対するリンパ浮腫外来、また治療や生活面での相談など、医師だけでなく専門看護師や理学療法士、作業療法士、薬剤師など様々な職種、部門がチームとしてサポートができるよう取り組んでいます。また地域の診療所や病院と連携を組みながら術後の治療や経過観察を行っています。
女性の9人に1人が乳がんにかかる時代と言われ、がんサバイバー(がん経験者)も増加しています。がんと共に生き、充実した生活を送ることも重要な課題です。地域をあげて乳がんの診断から治療までを理解しサポートできるよう取り組んでいます。
私たちは、このように多様な疾患や病態に適切に対応できるように毎日検算を積んでおり、低侵襲治療から拡大手術までの数多くの選択肢の中から一人一人の患者さんに適した最善の治療を提供することを志しています。