ホーム > 診療科・部門 > 脳神経内科 > 診療の特徴と主な対象疾患 > 神経が徐々に変性する病気(神経変性疾患)

ここから本文です。

更新日:2026年8月5日

神経が徐々に変性する病気(神経変性疾患) 

脳や脊髄の神経細胞が少しずつ減ってしまうことで、運動機能や認知機能が低下していく病気です。主な病気は以下です。

パーキンソン病

パーキンソン病は、脳内の神経伝達物質であるドパミンが減少することで、手足が震える、体が硬くなる、動きが遅くなるなど、身体の動きにスムーズさが失われる進行性の神経変性疾患です。

主に50代〜60代以降で発症することが多く、日本では指定難病に指定されています。

主な症状

症状は大きく「運動症状」と「非運動症状」の2つに分けられます。初期は身体の片側から症状が出ることが多いのが特徴です。

4大運動症状

  1. 静止時振戦(ふるえ):何もしないでじっとしている時に、手足が細かくふるえます(指先で丸薬を丸めるような動きと表現されることもあります)。
  2. 無動・動作緩慢:素早い動きができなくなり、歩幅が小さくなったり、瞬きが減って表情が硬くなったり(仮面様顔貌)します。
  3. 筋強剛(固縮):筋肉がこわばり、他人が手足を動かそうとすると、歯車のようなガクガクとした抵抗(歯車様固縮)を感じます。
  4. 姿勢反射障害:体のバランスが取りづらくなり、転びやすくなります(※進行期に現れやすい症状です)。

非運動症状(自律神経・精神症状)

運動症状が目立つ数年前から、頑固な便秘、嗅覚低下(においがわかりにくい)、レム睡眠行動異常症(睡眠中に大声を出す・暴れる)などが先行して現れることが分かっています。その他、うつ症状や立ちくらみなども見られます。

原因

脳の「中脳」という部分にある黒質(Substantia nigra)のドパミン神経細胞が減少することが直接の原因です。

なぜ細胞が減ってしまうのか、詳細なメカニズムはまだ完全には解明されていませんが、細胞内にα-シヌクレインという異常なタンパク質が蓄積し、細胞を傷つけてしまうことが深く関わっていると考えられています。

治療とアプローチ

現在、根本的に病気の進行を完全に止める治療法は見つかっていませんが、症状をコントロールして生活の質(QOL)を高く保つための治療が非常に進化しています。

  • 薬物療法:不足しているドパミンを補う「L-ドパ(レボドパ)」や、ドパミンの受容体を刺激する「ドパミンアゴニスト」などが中心となります。
  • リハビリテーション:筋力や柔軟性、バランス能力を維持するために、早期からの運動療法が極めて重要です。
  • 外科的治療(DBS):薬の効果が不安定になった進行期の患者さんに対して、脳に電極を植え込んで電気刺激を送る「脳深部刺激療法(DBS)」が行われることもあります。 

↑トップへ戻る

認知症

物忘れから始まり、記憶や判断力が低下する病気です。詳しくは、認知症のページをご覧ください。文字をクリックすると移動します。 

↑トップへ戻る

筋萎縮性側索硬化症(ALS)

筋萎縮性側索硬化症は、体を動かすための神経(運動ニューロン)が徐々に変性して消失していく、進行性の神経変性疾患です。

国の指定難病に指定されており、筋肉そのものの病気ではなく、「筋肉を動かせ」という脳や脊髄からの命令が伝わらなくなることで、全身の筋肉が徐々に痩せて(萎縮)、力がなくなっていきます。

主な症状の特徴

ALSの大きな特徴は、運動神経のみが障害される点です。そのため、感覚(触覚や痛みなど)や視力・聴力、知能などは基本的に保たれることが多いです。一般的に、初期症状は以下の2つのパターンに分かれます。

1.手足の症状(肢位型:約3/4)

  • 箸が持ちにくくなる、ボタンがかけられない。
  • スリッパが脱げやすい、つまづきやすい、足が重く感じる。

2.口やのどの症状(球麻痺型:約1/4)

  • 言葉が話しにくくなる(ろれつが回らない)。
  • 水や食べ物が飲み込みにくくなる(むせる)。

初期には現れにくい「4つの保たれる機能」

  • 感覚機能(痛み、冷たさ、触覚などは正常)
  • 眼球運動(目を動かす筋肉は比較的最後まで保たれる)
  • 排尿・排便機能(膀胱や直腸の括約筋は侵されにくい)
  • 皮膚機能(寝たきりになっても褥瘡〈床ずれ〉ができにくい)

原因と発症

  • 原因:現代の医学でも根本的な原因はまだ完全には解明されていません。神経細胞内に特定の異常タンパク質(TDP-43など)が蓄積することや、興奮性アミノ酸の代謝異常、遺伝的要因などが複雑に絡み合っていると考えられています。
  • 発症年齢:50代〜70代に多く、やや男性に多い傾向があります。
  • 遺伝性:大半(約90〜95%)が血縁に同じ病気のない「孤発性」で、遺伝性のものは約5〜10%とされています。

治療とケアの現状

現在、病気そのものを完全に治す根本的な治療法(根治)は見つかっていませんが、進行を遅らせるための薬物治療や、症状を和らげて生活の質(QOL)を保つためのケアが進化しています。

1. 薬物療法

進行を緩やかにするための治療薬として、主に以下のものが認可され、臨床で使用されています。

  • リルゾール(リルテック):グルタミン酸による神経毒性を抑え、生存期間を延長させる効果が期待されます。
  • エダラボン(ラジカット):フリーラジカル(活性酸素)を消去し、神経細胞を保護することで、日常の機能障害の進行を抑制します(点滴薬および経口懸濁液があります)。

2. 対症療法とケア(多職種連携)

症状の進行に合わせて、呼吸器内科、神経内科、リハビリテーション科、訪問看護、栄養士などの多職種がチームとなってサポートを行います。

  • 呼吸サポート:呼吸筋の低下に対して、初期〜中期はマスク型の非侵襲的陽圧換気(NPPV)、進行期には気管切開を伴う人工呼吸器(TPPV)の選択肢があります。
  • 栄養管理:嚥下(飲み込み)障害に対しては、食事の工夫(とろみやペースト化)や、内視鏡的胃瘻造設術(PEG)による胃瘻からの栄養補給が行われます。
  • コミュニケーション支援:手足や口が動かしにくくなった後も、視線入力装置や透明文字盤などを用いた意思伝達ツールの活用が進んでいます。 

↑トップへ戻る

脊髄小脳変性症(SCD)

脊髄小脳変性症は、歩行時のふらつきや手の震え、話しづらさなど、小脳の異常により、お酒に酔ったようになる、主に身体の動きをスムーズにコントロールする機能が徐々に低下していく神経の病気です。

日本では指定難病に指定されており、その病態や分類は多岐にわたります。まずは全体像がスムーズに掴めるよう、概要と主な症状を整理しました。

主な症状(小脳症状)

人間の動きの「微調整」を担う小脳や脊髄の神経細胞が影響を受けるため、以下のような運動失調症状が中心となります。

  • 体幹失調(歩行障害):歩くときに足元がふらつく、幅を広く取らないとバランスが保てない。
  • 四肢失調(手の震え):物に手を伸ばすときに震える(企図振戦)、ボタンがかけづらいなど。
  • 構音障害:言葉がなめらかに出ない、話し方が途切れ途切れになる。
  • 眼球運動障害:視線が定まらず、物が見づらく感じる。

病型の分類

脊髄小脳変性症は単一の病気ではなく、いくつかのタイプに分類されます。大きく分けると「遺伝性(家族性)」と「非遺伝性(孤発性)」の2つに分類され、日本では非遺伝性が全体の約3分の2を占めるのが特徴です。

分類 主な病型・特徴

非遺伝性(孤発性)     

※全体の約65%

多系統萎縮症(MSA):自律神経症状(起立性低血圧や排尿障害)やパーキンソン症状を伴うことが多い。

皮質小脳萎縮症(CCA):症状が純粋に小脳症状のみに留まるケース。

遺伝性(家族性)

※全体の約35%

常染色体顕性(優性)遺伝型: SCA1, SCA2, SCA3(マチャド・ジョセフ病), SCA6 など(日本ではSCA6やSCA3が多い)。

常染色体潜性(劣性)遺伝型: フリードライヒ運動失調症など(日本では極めて稀)。

 

治療とアプローチの現状

根本的な治療法(病気そのものの進行を完全に止める方法)はまだ確立されていませんが、「症状の緩和」と「機能の維持」を目的としたアプローチが日々行われています。

薬物療法

小脳性運動失調に対しては、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)誘導体であるタルチレリン水和物(セレジスト)などが処方され、神経伝達を刺激して症状の緩和を図ります。

リハビリテーション(極めて重要)

残されている運動機能を最大限に活かし、日常生活の動作(ADL)を維持するために、理学療法(PT)や作業療法(OT)、言語聴覚療法(ST)が継続的に行われます。

↑トップへ戻る

 

ページの先頭へ戻る