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更新日:2026年8月5日

末梢神経や筋肉自体の病気 

脳や脊髄から出たあとの末梢神経や、動かす対象である筋肉そのものの異常です。手足のしびれ、痛みが左右対称に起こる(糖尿病の合併症などでも頻発)末梢神経障害(ニューロパチー)、筋肉の細胞が壊れ、全身の筋力が低下していく筋ジストロフィーなどがあります。 

抹消神経障害

脳と脊髄からなる「中枢神経」に対し、そこから分岐して全身の器官や手足へと伸びているネットワークが末梢神経です。ここに何らかのダメージが生じることで、感覚異常や運動麻痺、自律神経症状など多彩な神経症状が引き起こされます。

抹消神経の構造と障害パターン

末梢神経は、情報を伝える中心的な突起である軸索(Axon)と、それを包み込んで電気信号の伝導速度を速める絶縁体のような役割の髄鞘(Myelin sheath)で構成されています。

障害される部位や機序によって、大きく以下の2つに大別されます。

  • 軸索変性:神経細胞から伸びる軸索そのものがダメージを受けるパターン。代謝障害や中毒などで多く見られ、一般に回復には時間がかかります。
  • 脱髄:軸索を覆う髄鞘(ずいしょう)が破壊されるパターン。電気信号の伝導がブロックまたは遅延します(免疫性疾患などに多い)。髄鞘は再形成されやすいため、軸索本体が保たれていれば比較的速やかに回復することがあります。

受傷パターンによる分類

どの神経が、どのように侵されているかによって治療のアプローチが変わります。

分類 特徴 主な原因・疾患
単神経障害 特定の1本の神経だけが局所的に障害される。 絞扼性神経障害(手根管症候群、肘部管症候群)、外傷など。
多発単神経障害     異なる部位の独立した単一神経が、非対称かつ斑状に複数障害される。 血管炎(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症など)、膠原病、糖尿病性アミロトローフィー。
多発神経障害 全身の末梢神経が広範に、かつ遠位部から対称性に障害される。長さ依存性に生じやすい。 糖尿病性神経障害、ギラン・バレー症候群、薬剤性(抗がん剤など)、アルコール性、栄養欠乏(ビタミンB群)。

主な症状

障害される神経線維の機能(感覚・運動・自律神経)によって症状が異なります。

感覚神経症状

  • 陽性症状:痺れ、ピリピリ・ジンジンする痛み、痛覚過敏。
  • 陰性症状:感覚が鈍い、触られている感覚がわからない、深部感覚低下による歩行のふらつき。

運動神経症状

筋力低下、遠位筋の萎縮、肉眼で見える筋肉のピクつき(線維束性収縮)、腱反射の低下・消失。

自律神経症状

起立性低血圧、発汗異常(無汗・多汗)、胃腸運動障害(便秘・下痢)、排尿障害、神経因性膀胱など。

診断

原因精査においては、詳細な病歴聴取(発症様式、内服歴、既往歴、家族歴)と神経学的診察が最も重視されます。

  1. 生理検査:神経伝導検査(NCS)により、軸索型か脱髄型か、あるいは伝導ブロックの有無を客観的に評価します。針筋電図(EMG)で活動電位を調べることもあります。
  2. 血液検査:血糖・HbA1c(糖尿病)、ビタミンB1・B12、葉酸、甲状腺機能、自己抗体(SS-A/SS-B、ANCAなど)、免疫グロブリン、抗 ganglioside 抗体などをスクリーニングします。

治療

原因疾患の治療(血糖コントロール、原因薬剤の中止、ビタミン補充など)が原則です。

免疫性疾患であれば免疫グロブリン療法(IVIg)やステロイド、血漿交換。神経障害性疼痛に対しては、ガバペンチノイド(プレガバリン、ミロガバリン)やSNRIなどの薬剤による対症療法が行われます。 

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筋ジストロフィー

筋ジストロフィーは、遺伝子の変異によって筋肉にある特定のタンパク質が正常に作られなくなり、全身の骨格筋が徐々に衰えていく進行性の遺伝性疾患です。

国の指定難病に指定されており、発症時期や遺伝形式、障害される筋肉の部位によっていくつかのタイプに分類されます。

主な特徴と病態

筋ジストロフィーは、筋肉の細胞(筋線維)の壊死と再生のバランスが崩れることにあります。

健康な体では、運動などで壊れた筋線維はすぐに再生されますが、この疾患では筋肉を補強・維持するタンパク質(ジストロフィンなど)が不足しているため、再生が追いつかずに筋肉が徐々に線維化・脂肪化し、萎縮(Atrophied Muscle)していきます。

代表的な型(分類)

型(分類) 主な発症時期 遺伝形式 特徴
デュシェンヌ型 3〜5歳頃(男児) X連鎖劣性遺伝 最も頻度が高い。歩行時のふらつきや転びやすさから始まり、10代前半で車椅子生活になることが多い。心筋症や呼吸筋の障害を合併しやすい。
ベッカー型 5〜15歳頃以降 X連鎖劣性遺伝 デュシェンヌ型に似ているが、タンパク質が少量作られるため、進行が比較的緩やかで成人後も歩行可能なケースが多い。
肢帯型 幼少期〜成人期 常染色体優性/劣性 肩甲帯(肩まわり)や骨盤帯(腰まわり)の筋肉から徐々に萎縮が始まる。
顔面肩甲上腕型 10代〜20代 常染色体優性 目が完全に閉じない、口笛が吹けないなど、顔面の筋肉から始まり、肩や上腕へと広がる。

筋強直性ジストロフィー       

成人期(最多) 常染色体優性 筋肉が収縮した後に弛緩しにくい(把握ミオトニア:握った手が開きにくい)症状や、白内障、糖尿病などの全身症状を伴う。

近年の治療動向

かつては根本的な治療法がなく、対症療法(ステロイド投与やリハビリテーション、呼吸管理)が中心でしたが、近年の遺伝子医療の進歩により大きな転換期を迎えています。

  • 核酸医薬(エクソンスキップ治療):デュシェンヌ型などを対象に、変異した遺伝子の一部を飛び越えて(スキップして)読み取らせることで、機能を残したタンパク質を産生させる薬剤(ビルトラセンなど)が登場しています。
  • 遺伝子治療:不足している遺伝子そのものを補う治療法(AAVベクターを用いた遺伝子導入)の開発・実用化も世界中で急速に進んでいます。

多角的なアプローチ(リハビリ、心機能・呼吸管理、栄養管理)をチーム医療で早期から行うことが、QOL(生活の質)の維持に極めて重要とされています。

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