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更新日:2021年11月18日

食道・胃・大腸がんの内視鏡治療

消化器内科 平田慶和

はじめに

最近はお腹を切らずにがんを治すという患者さんに負担の少ない治療法が普及しています。内視鏡を用いてがんの局所だけを切除するという方法で、内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic submucosal dissection:ESD)といいます(図1)。これによって胃や大腸の臓器を温存したうえで治療に伴う痛みもほとんどなく、かつ短期間の入院でのがん治療が可能となりました。

ESDとは

2000年代から日本で開発された治療法で、電気メスを用いてがんを切りはがしていく方法です(図1)。現在、当院では食道・胃・大腸とすべての消化管がんに対してESDを導入しております。対象は、粘膜内にとどまる早期がんです。この診断は別頁で詳しく紹介しておりますように、拡大内視鏡と画像強調を用いて正確に判断しています。

図1電気メスを用いてがんを切りはがしていく内視鏡的粘膜下層剥離術の様子

ESDの実際

現在当院ではクリニカルパスに基づき、6-8日の入院でESDを行っています。手術当日は鎮静剤使用下に、医師2名以上で治療を行います。術後の痛みはほとんどなく、翌日又は翌々日から食事開始となります。
ESDの実際画像を図2に示します。

図2当院の実際の症例の写真

ESDの偶発症

出血と穿孔(穴が開く)があります。全国平均で3%程度と報告されており、当院でもほぼ同等です。起こった場合も多くは内視鏡治療や保存的治療で対応できますが、それで対応できない場合は緊急外科手術が必要となることがあります。

当院の治療実績

 

2015年

2016年

2017年

2018年

食道・胃

66

75

82

85

大腸

47

56

49

51

術後フォロー

切除した組織を顕微鏡で詳しく検査し根治度を判断します。
根治と判断された場合は定期経過観察となります。最近はがんパスという術後5年間のきめ細かな検査スケジュールをもとに漏れのない定期検査を提案しております。
残念ながら非治癒切除と判断された場合は再発のリスクを説明し、追加外科切除の必要性を判断することになります。

当院の取り組み

高齢者に対するESD

近年の高齢化社会の到来に伴い、高齢でがんを発症する患者さんも増えております。そこで当院での高齢者に対するESDの安全性を検討しました。結果は高齢者においてはやや術後肺炎の発生が高いものの、周術期合併症の発生率は非高齢者と差がなく、年齢を問わずESDは安全に行える治療法であることが確認されました。
(当院における高齢者に対する胃ESDの検討 第22回消化器関連学会週間(JDDW) 2014年10月25日 デジタルポスター 神戸)

より安全で確実な術中鎮静を目指して

ESDは鎮静剤を用いて手術を行います。鎮静剤は麻酔薬とは異なりますので、全身麻酔ようなリスクは伴いませんが、一方でアルコール多飲者などは鎮静剤が効きにくいことが経験されます。そこでより安全で確実な鎮静を達成するための検討を行いました。3種類の薬を併用することで安定した鎮静を得ることができることが確認され、現在はそれを実践しております。
(胃ESDにおけるデクスメデトミジンの有用性の検討。第23回日本消化器関連学会週間(JDDW) 2015年10月9日 デジタルポスター 東京)

術後合併症を予防する

近年はESD技術の向上に伴い、極めて大きな病変も切除可能となってきました。一方で、切除面積が大きくなるに伴い、術後狭窄という合併症が危惧されます。特に管腔の狭い食道ではその傾向が顕著です。ひとたび狭窄が生じるとその後の患者さんのQOLが低下することになります。当院では狭窄予防にステロイド局注やPGAシートといった最新の予防法を取り入れています。

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