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更新日:2018年12月8日
消化器内科 平田慶和
大腸憩室とは、大腸壁の弱くなった部位が、大腸内の圧力によって外側に押し出されて突出した様に変形する病態です。(図1)。高齢化社会の到来や食生活の欧米化に伴って、大腸憩室を有する患者さんは増加しております。憩室を有する患者さんの大部分は無症状ですが、時に憩室からの出血(大腸憩室出血)や感染(大腸憩室炎)を生じることがあります。
大腸憩室出血は下部消化管出血(大腸からの出血)のうちで、もっとも頻度の高い原因疾患です(図2)。近年は、高齢化社会などにより、心臓や脳の血管性病変を有する患者さんは増加し、これらの病気の予防のために抗血栓薬(血液をサラサラにする薬)が多用されていることも影響し、大腸憩室出血を含めた下部消化管出血(大腸からの出血)も増加の一途をたどっています。
大腸憩室出血を発症した場合は、点滴治療や、内視鏡的止血術、血管塞栓術や手術を組み合わせて治療を行うことになります。しかしこれまでどのような患者さんに対して内視鏡的止血術が必要なのか、また点滴治療のみで止血できる患者さんの特徴は何かという点がはっきりとしていませんでした。そこで今回当院で入院加療を要した大腸憩室出血の患者を対象にどのような治療戦略が最も適しているかを検討しました。
注目したのは造影CT検査です。造影CTはヨード系造影剤を静脈に注射してCTを撮影するという検査であり患者さんへの苦痛を伴う検査ではありません。当院での憩室出血患者さん・何十例かの造影CT検査を検討した結果、造影剤の血管外漏出という所見が出血量の多い憩室出血患者さんにおいてよくみられる所見ではないかと考えました。(図3)
そこで、造影CTで造影剤の血管外漏出が見られる患者さんとそうでない患者さんに分けて、その後に施行した内視鏡検査で出血責任憩室を同定できたかどうかを検討しました。結果は造影CTで造影剤の血管外漏出が見られる患者さんは内視鏡検査を行うことで高率に責任憩室を同定でき、内視鏡的止血術につながる事が明らかとなりました(表1)。逆に言うと、造影CTで造影剤の血管外漏出が見られない患者さんは点滴治療のみで止血が期待できるということになります。
以上の結果をもとに、当院では諸検査にて大腸憩室出血が疑われた患者さんに対しては可能な限り造影CT検査を施行し、造影剤の血管外漏出の有無によってその後の治療方針を決定するという治療戦略を確立し、実践しております(図4)。
この治療戦略を確立して以降、憩室出血の患者さんに対しては、初診時に重症度を正確に判断でき、それぞれの患者さんに最適な治療を提供できるようになったと考えております。
なお上記の内容は以下のごとく学会誌へ報告しております。