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更新日:2026年8月13日

心不全(再入院を防ぐ取り組み)

心不全患者数は年々増え続けています。しかも、高齢の患者さんが多くなっています。

心不全は多くの場合、治らないだけでなく、多くの患者さんが複数の病気や問題をかかえています。あなたと、あなたを取り囲む家族や、医療関係者、介護職員などさまざまな人たちが心不全と関わり続けていく「心不全を地域全体で診る」必要があります。

そのために当院は、「心不全地域連携パスで再入院予防」「心不全教育入院」「医科歯科連携」「心不全出前講座」など、多くの取り組みを行っています。 

心不全を地域全体で診る

高齢になればなるほど心不全の罹患率が上昇すること言われています。高齢化社会による心不全パンデミックで、2024年には年間約500人の急性又は慢性心不全急性増悪による患者さんが、当院の循環器内科にて入院治療を要しました。心不全患者さんは、死亡率が高いだけでなく、心不全増悪による再入院率も高いと報告されています。再入院しますと、死亡率がさらに上昇し、平均年齢は80歳と高齢化していることから筋肉の減少(筋萎縮)や低栄養などが加わり、日常生活動作(ADL)※1や運動耐容能※2の低下を招いてしまいます。症状がコントロールできなくなったり、思うように動けなくなり、住み慣れた自分の家に戻れなくなることは、生活の質(QOL)を低下させてしまいます。

※1:人がひとりで自立した生活を送るために必要な、毎日繰り返す基本的な動作の総称。

※2:身体運動や身体活動にどこまで耐えられるかを示す運動耐性の限界値のことで、単に筋力があるかどうかではなく、心臓・血管・肺・骨格筋・自律神経系が連携して、身体活動に必要な酸素を適切に全身へ供給・利用できているかを総合的に評価する指標。

私たちは今、心不全パンデミックを受けて「協働開始」のステージから「克服中」のステージに移ってきている

心不全患者さんの死亡率低減、再入院抑制のためには、患者さんや家族、医療従事者、介護・福祉従事者すべてが“協働”していく必要があると感じています。患者さんや家族には、「心不全とはどんな病気か」、「悪化しないために日頃からどんなことが必要なのか」、をしっかり理解してもらうことが不可欠です。基礎心疾患(図1)※3を含めて、心不全患者さんは多様性に富んでいることから、医療従事者は個々の患者に応じた「正確な」医療を提供する必要性があります。薬物療法だけでなく、栄養管理、リハビリテーションの重要性が高まっています。また、患者さんは地域に戻っていきますので、入院中の治療やケアの内容を地域の介護・福祉職の方々と如何に共有するかが重要と感じています。

※3:心不全や不整脈、脳梗塞などの発症・増悪の背景となっている元々の心臓の病気全般を指し、代表的な疾患は、虚血性心疾患(冠動脈疾患)や弁膜症、心筋症、高血圧、不整脈、先天性心疾患などがある。

私たちは、2018年から「心不全ノート(心不全地域連携パス)」を運用し、心不全増悪による再入院を抑制すべく活動を続けています。入院中は心不全療養指導士を中心とした多職種チーム医療を展開し、退院後はかかりつけ医との連携診療、福祉・介護職、かかりつけ調剤薬局の職員の方々と勉強会などを通じて連携を深めています。2021年1月から12月に当院循環器内科に入院治療を要した心不全症例の退院後1年以内の心不全増悪による再入院率は20%未満に低下してきています(図2)。

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心不全地域連携パスで再入院予防

心不全は原因や症状が人それぞれ異なるため、医療スタッフが患者さんに合わせた治療やケアを丁寧にお伝えすることが大切です。
私たちは医師や看護師、薬剤師、栄養士、リハビリスタッフなど病院内の多職種チームに加え、地域の先生方とも連携して「心不全ノート(地域連携パス)」を作成しています。このノートは、入院から退院後の生活まで一貫して支える仕組みで、患者さんやご家族がご自宅でも安心して過ごせるように役立てています。2022年には新しい医学的知見を反映し、第2版へ改訂しました。

心不全ノート(PDF:8,293KB)

入院中は循環器内科病棟のスタッフを中心に、多職種のチームが一丸となってサポート。退院後はかかりつけ医や薬局、介護・福祉の方々と勉強会などを通じて情報を共有し、継続したフォロー体制を整えています。
こうした取り組みにより、心不全で入院された方が 退院後1年以内に再入院する割合は20%未満にまで改善しています(図1)。

 

私たちは、患者さんが安心して生活を続けられるよう、今後も地域と協力して取り組んでまいります。
この心不全ノートは、患者さんやご家族に分かりやすい内容であること、一人ひとりの患者さんを地域全体のみんなで見守っていくことを目指しています。以下を大切にしています。

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心不全ノートは、分かりやすいように3つの色でページを分けています(図2)。

緑色のページmokuji1
このページは、医師や看護師による説明や、ご自身で体調を記録するために使います。
入院中から血圧、脈拍、体重、薬の飲み方、体の調子などを毎日チェックします。施設で過ごす方も、できる範囲で体調の記録を続けていただきます。
オレンジ色のページ
心不全がどんな病気か、治療や検査、リハビリ、ご家族の役割などについて、わかりやすくまとめています。
将来の生き方(アドバンス・ケア・プランニング)や、体力や生活について(フレイル)も紹介しています。
赤色のページ
退院時や外来受診時に、達成度を評価するためのチェックリストがあります。心不全が悪くなる理由には、塩分・水分のとりすぎや薬の飲み忘れなどの、「アドヒアランス低下※4」が最も多いことが分かりました(表1)。そのため、複数の専門職のスタッフがサポートする必要性があります。
当院やかかりつけの先生、施設のスタッフが患者さんを一緒に見守り、相談や指導を続けていきます。

※4:患者が治療方針や服薬の必要性を理解・納得した上で、主体的に治療に取り組めていない状態。
 
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心不全療養指導士がサポート

「心不全療養指導士」とは、心不全患者さんが安心して療養生活を送れるようにサポートする専門資格です。日本循環器学会が2021年度から認定を始めた新しい制度で、医師・看護師・薬剤師・理学療法士・管理栄養士など、様々な医療専門職が対象となります。専門的な知識や技術を習得したうえで、入院中から退院後、在宅・地域医療に至るまで一貫して療養を支えることを目的としています。
当院では、これまでに 12名のスタッフが「心不全療養指導士」資格を取得しました。

現在行っている主な取り組み

① 心不全ノート(地域連携パス)を活用した個別指導

患者さんお一人おひとりの生活環境や状況に合わせて、日常生活で気をつけるポイントを丁寧にお伝えします(図3)。退院後も安心して過ごせるよう準備を整えます。

② セルフケア指導の実践

入院中に測定した血圧や体重を、患者さんご自身で心不全ノートに記録していただく「セルフケア指導」を行っています。ご自身の体調変化に早めに気づき、適切に対応できるよう支援します。

③ 退院前のサポート体制

退院前には患者さんの「セルフケア能力」をしっかりと把握し、退院後も継続して自己管理ができるよう、一人ひとりに合った支援計画を立てます。

④ 地域との連携体制

これらの取り組みは、かかりつけ医や薬局、訪問看護、介護サービスなど地域の医療・介護スタッフと情報を共有し、退院後も途切れることなく患者さんを支える仕組みの一部として機能しています。 

退院後電話フォローによるセルフケア継続支援

退院後も安心してセルフケアを続けられるよう支援するプログラムです。退院後から一定の間隔(例:退院翌日、1 週目、1 ヵ月目など)で複数回にわたり、看護師が電話で症状や日常生活の状況をお伺いします。

つなぐ電話プロジェクトでは、患者さんご本人が心不全に関する知識や推奨される行動を繰り返し学ぶことで、徐々にセルフケア行動が定着し、再入院率の低下につながることが期待されています。

[急性心不全患者に対する退院後の電話によるセルフケア支援とその効果(つなぐ電話プロジェクト)]
(臨床研究についての詳細はこちら)

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心不全教育入院  ~心不全が悪くなって緊急入院する前に~

毎年約500人の心不全の患者さんが当院に入院します。その多くは、以前から心不全と診断されていたり、息切れなどの症状があり、血液検査で心臓の負担を示す「BNP」という数値が高かった方です。心不全が悪化すると入院が必要になり、約10%の方が治療中に命を落とす場合があります。また、退院後に再び悪化して再入院となる方も多く、再入院をくり返すと筋力や栄養状態が低下し、日常生活にも支障がでます。

kyouiku日本循環器学会は、心不全の患者さんに対して医師・看護師・薬剤師・栄養士・リハビリスタッフなど、様々な職種が協力して教育やサポートを行うことを推奨しています。当院でも入院中は多職種チームでしっかり支えていますが、外来通院中の患者さんや入院経験がない方には同じサポートを十分に提供するのが難しいのが現状です。そこで当院では「心不全教育入院」を実施しています。これはあらかじめ日程を決めた入院で、患者さん一人ひとりの体調や生活スタイルに合わせて療養のコツや運動方法を学んでいただくものです。体力や生活の質が落ちたり、命にかかわる病状の悪化を未然に防ぐためのプログラムとしてご活用ください。

どのような方が対象ですか?

当院の循環器内科に通院中の方、またはかかりつけの先生から教育入院を目的にご紹介いただいた方で、次のいずれかに該当する場合が対象となります。(ただし、介護保険をご利用中の方は除きます)

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心疾患をお持ちで、心不全について詳しく知りたい方や、日常生活での注意点を学びたい方にも心不全教育入院をおすすめしています。

何をするのですか?

入院期間:4泊5日(日曜日午後2時入院・木曜日午前 10時退院)

※ 患者さんの都合により、調整することができます。入院病棟:東3階

入院人数:1週間に1人

食事:心臓食(塩分6g/日)

検査:退院前に採血、心電図、胸部X線を確認します

(心エコー検査は入院前に外来で行います)

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費用はどれくらいかかりますか?

<患者さんの負担額>

1割負担:35,000円(非課税者を除く)

2割負担:57,600円(非課税者を除く)

3割負担:105,000円(限度額適応しない概算)

※  食事代は別途必要になります

※ 個室入院希望の方は、別途個室代が必要になります

ご加入の健康保険の自己負担限度額が適応されます。個人の年齢や取得により、自己負担額はことなります。 

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医科歯科連携(心不全患者さんでの嚥下機能評価と介入)

何のために行うのですか?

心不全患者さんは嚥下障害(食べたり飲んだりするときにむせること)を呈する頻度が高く、嚥下障害が併存しますと誤嚥性肺炎などの原因となり、入院日数が長くなり、死亡率が上昇してしまうことが報告されています。心不全が悪くなって入院した時に嚥下障害の有無をチェックして、必要な患者さんに専門的介入を行うことは有益性が高いと考えます。

誰が対象ですか?

心不全にて入院治療を要した75~85歳の患者さんが対象です。

何をするのですか?

以下のスケジュールで評価・介入を行います。

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心不全出前講座    ~地域で診る心不全~

心不全患者さんが住み慣れた地域で安心して生活できるよう、医療機関だけでなく介護施設や福祉事業所の皆様との連携を重視しています。「一人の心不全患者さんを複数の目で診れる体制」を目指し、地域全体で患者さんを支えるネットワークづくりに取り組んでいます。

これまでの活動実績

2018年~2019年

春日井市内の介護施設や有料老人ホーム、春日井市外の病院などを多職種にて直接訪問し、延べ140名を対象に講演会や議論を行いました。

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2021年

  • オンライン形式にリニューアルし、延べ14事業者69名を対象に実施しました。
  • 地域のかかりつけ薬局を対象にオンライン形式で実施しました。退院後の薬物療法を対するアプローチなどについて議論しました。

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2023年

地域の介護・福祉施設を対象に、オンライン形式で実施しました。地域で生活する患者さんの治療やケアの情報を、介護・福祉職の方々に適切に伝えることを目的としました。

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2025年

市内の医療・福祉・介護従事者を対象に、現地開催あるいはオンライン形式で実施しました。

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今後の開催予定

今後も随時開催を予定しております。医療連携室までお気軽にお問い合わせください。皆さまからのお申し込みをお待ちしております。

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