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更新日:2024年5月29日
「痛み」と聞いてあなたはどんな感情を抱くでしょうか?
おそらく、多くの人が、痛みについて「嫌なもの」「つらいもの」といったネガティブな感情をお持ちだと思います。私たちが普段感じる痛みとは一体どのようなものなのか、国際疼痛学会(International Association for the Study of Pain: IASP)の定義では、「痛みは、実際の組織損傷もしくは組織損傷が起こり得る状態に付随する、あるいはそれに似た、感覚かつ情動の不快な体験」と述べられています。これは、もっと簡潔に述べると、痛みとは、ケガや手術などの傷(組織損傷)の有無に関わらず起こり得る、気持ちの体験であるということを示しています。
人間には視覚・聴覚・味覚・臭覚・触覚という“五感”が存在します。
これらは概ね他人と共有することが出来ます。そしてこの五感に何らかの異常が生じた時には、どこが、どのくらい異常なのか検査をして数値化することができます。
つまり健康な人(他人)との比較が可能な感覚であるとも言えます。
一方、痛覚(痛み)はどうでしょうか?その時の感情など置かれている状況によっても変化し、痛みは他人と共有することが難しい感覚なのです。
例えば、同じ条件で、見た目が同じケガをしたとして、私の痛みはあなたの痛みと全く一緒だと言えるでしょうか。
また、人によっては、天気の悪い日はいつもの腰痛をよりしんどく感じるという経験はありませんか?
ほかにも、趣味に没頭している間は痛みを忘れられるという人もいるでしょう。
同じ症状で悩む人と話したり、周りの人のサポートが得られたりすると前向きな気持ちになり、痛みがなんだか軽く感じられるのも、痛みがあくまで主観的な、気持ちの体験であるためです。
では、なぜ「痛み」は存在するのでしょう。
例えば、熱いお鍋に触ってしまったとき、人はとっさに手を引っ込めます。
つまり痛みは、身体に起きた異常を知らせる警告信号としての役割を果たしています。
とすると、痛みは危険を知らせるために私たちにとって無くてはならない存在のはずです。
しかし、残念ながら、実際にはそのような警告信号としての痛みだけでなく、無益な痛みが存在します。
これが痛みの厄介なところです。警告信号としての役割を果たした痛みが、様々な理由により長引いてしまうと慢性痛と呼ばれる痛みになります。痛みが長期化することで気持ちが落ち込んだり、痛みの為動かない状態が続くと、実際に動けなくなってしまい、動けない自分に自信をなくしてしまうといった悪循環に陥ることが少なくありません。
このような負のスパイラルが痛みを助長し、治療を難しくしている大きな要因でもあります。
この状態を放置しておくと、段々と患者さん本人の生活の質は低下していきます。
(図:疼痛―回避モデル ―は負のスパイラルを意味する)